重い工具箱や台車、ラックなどの移動に欠かせない「キャスター」。しかし一見どれも同じように見えて、実は種類や性能が多種多様。「何となくで選んで失敗した…」という声もよく耳にします。この記事では、現場でよく使われるキャスターの種類と、用途に合った選び方のコツをわかりやすく解説します。
キャスターとは?基本構造と役割
キャスターは、物を移動させる為の車輪付きの部品で、主に以下の構成で成り立っています。
ホイール、ブラケット(取付金具)、ベアリング
他にも車輪の材質、固定式と自在式の違い、ストッパー付きの有無など用途により違いがあります。
キャスターの主な種類

(1)固定キャスター
• 一方向にしか動かない
• 直線移動に最適
固定キャスターは、車輪が前後の一方向にしか動かないタイプです。方向転換はできませんが、直進性が高いため、まっすぐ動かす作業に向いています。
主な特徴
• シンプルな構造で強度が高い
• 荷物をまっすぐ運ぶ用途に最適
• 自在キャスターよりも価格が安め

(2)自在キャスター
• 360度回転するので取り回しがしやすい
• 狭い場所での使用に便利
自在キャスターは、車輪部分が360度回転できる構造になっており、方向転換やその場旋回が可能です。狭いスペースでの取り回しに強く、作業台やラックなどによく使われます。
主な特徴
• スムーズな方向転換ができる
• 狭い通路や作業スペースで活躍
• 固定キャスターより操作性に優れる

(3)自在ストッパー付きキャスター
• 回転+移動をロックできる
• 作業中の安定性を確保
自在キャスターにロック機能(ストッパー)が付いたタイプです。ストッパーは「車輪の回転を止めるタイプ」「車輪+首振りを両方ロックするタイプ」の2種類があります。
主な特徴
• 移動と固定を切り替えられる
• 傾斜や段差のある場所でも安心
• 作業中の事故防止に有効

(4)低床キャスター
• 全高が低く、重心を下げたい時に最適
• 機械などの据え置きにも
低床キャスターは、全体の高さが抑えられた設計で、機器の重心を低くしたい場合に最適です。スペースが限られている現場や、機械装置の下部に取り付ける場面で多く使われます。
主な特徴
• 全高が低く、転倒リスクが少ない
• 小型ながら耐荷重の高いものも多い
• 装置の外観や安定性を損ねない

(5)重荷重用キャスター
• 鋼製ホイールやウレタン製で大重量に対応
• 工場や物流倉庫で使用されることが多い
重荷重用キャスターは、1輪あたりの耐荷重が数百kg〜数トンに及ぶタイプです。ホイール素材に鋼や強化ナイロンを使っており、非常に頑丈です。
主な特徴
• 非常に高い耐荷重性能
• 床面との摩擦にも強い
• 耐熱・耐油仕様のモデルもあり
キャスターの車輪素材とその特性

【ゴム】
メリット
• 静音性が高く、走行音が静か
• 適度なクッション性で段差や凹凸に強い
• 床にやさしい(フローリングやPタイルに最適)
デメリット
• 耐摩耗性はやや低め(すり減りやすい)
• 重い荷物には不向き(たわみや変形の原因に)
• 経年劣化しやすく、屋外では劣化が早い
【おすすめ用途】
屋内の作業台、工具ワゴン、住宅内DIY

【ナイロン】
メリット
• 軽量で扱いやすい
• 摩耗に強く、耐久性が高い
• 汚れが付きにくく清掃しやすい
デメリット
• 硬くて走行音が大きめ
• クッション性がないため、床にキズがつきやすい
• 滑りやすいので制動力は低め
【おすすめ用途】
工場・倉庫内のスムーズな移動
アスファルトやコンクリート床

【ウレタン】
メリット
• 床にやさしく、滑らかな走行性
• ゴムとナイロンの中間的な性能
• 静音性、耐摩耗性、耐薬品性のバランスが良い
デメリット
• 荷重によってはフラットスポット(変形跡)が残る
• ゴムに比べてやや価格が高め
【おすすめ用途】
精密機器の搬送台
倉庫・オフィスなど屋内全般

【鋳物(鋼)】
メリット
• 非常に高い耐荷重性能(トン単位も可)
• 摩耗しにくく、耐熱・耐油性も優れる
• 荷重がかかっても変形しない
デメリット
• 音が大きく、走行時に振動あり
• 床を傷つけやすい(床材によっては要注意)
• 非常に硬く、クッション性ゼロ
【おすすめ用途】
屋外作業、重量機械の移動
工場・現場での重量物運搬台車

【エラストマー】
メリット
• ゴムに似た柔らかさ+耐久性が高い
• 床に優しく、静音性が高い
• 軽量で操作性に優れる
デメリット
• 高温環境では劣化しやすい
• ゴムほどのグリップ力はない
【おすすめ用途】
医療用機器、展示什器、静音が必要な現場
比較表
素材 | 静音性 | 耐荷重 | 床へのやさしさ | 耐久性 | コスト |
ゴム | ◎ | △ | ◎ | △ | 安め |
ナイロン | △ | ○ | △ | ◎ | 安め |
ウレタン | ○ | ○ | ○ | ○ | 中程度 |
鋼・鋳物 | × | ◎ | × | ◎ | 高め |
エラストマー | ◎ | △ | ◎ | ○ | やや高め |
キャスター選びのチェックポイント
• 使用場所(屋内か屋外か、床材の種類)
• 耐荷重(1輪あたりの荷重 × 使用数)
• 動かしやすさ(自在・固定の組み合わせ)
• ストッパーの必要性
• 取付方法(プレート式 or ねじ込み式)
現場目線の選び方のコツ
• 屋外で使うならナイロン or 鋼製を選ぶ
• 騒音対策が必要ならウレタンやゴム製を
• 重いものを運ぶときは必ず耐荷重をチェック
• 自在×2、固定×2の組み合わせが一番バランスが良い
よくある失敗例と対策
「安物を選んで床にキズが…」→ 床材に適した車輪素材を選ぶ
「耐荷重オーバーで車輪が割れた」→ 1輪あたりの荷重を正確に計算
「自在ばかりでまっすぐ動かない」→ 固定キャスターとの組み合わせを考える
まとめ
キャスターは「どう使うか」によって最適な種類が大きく変わります。
現場での使い勝手や安全性を高めるためにも、種類・素材・耐荷重などのポイントをしっかり押さえて選ぶことが大切です。
今回紹介した内容を参考に、ぜひ最適なキャスターを選んでください!
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